副審との打合わせ詳細編その2:オフサイド3:ゴールラインの外に守備側競技者がいる場合
オフサイドについては以下の項目について話します。
- 副審の基本ポジションについて
- オフサイドキャンセル
- ゴールライン外に守備側競技者がいる場合の扱い New!
- 新たな再開方法に関しての注意点 New!
- 最終ラインよりゴールライン側にボールが運ばれた場合について(1に含めることも)
1番、4番、5番は、持ち回りの4級審判員や、経験の浅い人向けのものです。
前回の日記では、2:オフサイドキャンセルについて説明していきました。
今回は、3,4の競技規則の改正事項について整理していきます。
ゴールラインの外に守備側競技者がいる場合の扱い
競技規則の記載
主審の証人なくフィールドを離れた守備側競技者は、オフサイドの判断のため、プレーが次に停止されるまで、または、守備側チームがボールをハーフウェーラインに向かってプレーし、ボールが自分たちのペナルティーエリアから出るまで、ゴールラインかタッチライン上にいるものとみなされる。
典型的には、この図のような場合ですね。
黄色いラインがオフサイドラインです。
※ここでは、守備側競技者がライン上にいるとみなされる状態が解かれることを
「解除」と呼ぶことにしています。
※パスじゃなくて自分でドリブルしてPAに出てもも良いです。
これまでは、次にアウトオブプレーになるまで守備側競技者はゴールライン上にいることになっていました。
つまり、今回の改正で、試合の状況の変動によって
オフサイドラインがインプレー中に急激に変わる
ということが起きるようになりました。
副審にとっては受難ですね。トップレベルではGLT導入で負担が軽くなったものもあるのですが、グラスルーツレベルだと大変です。
しかも、具体的にどういう状況になればオフサイドラインが変わるのかが、競技規則の記述だけではわかりません。
こんな複雑な新ルールを導入するのに図も何も記載しないとかFIFAは鬼畜ですね。
そこで、優秀なJFAはFIFAに質問して回答を得てきました!
まぁ全部JFAが質問したわけではないでしょうが
JFAの質問と回答
Q5: オフサイドの判断をするため、相手競技者が攻撃している間にフィールドから離れた守備側競技者を理論上ゴールライン上にいるとみなすのはどれくらいの間か?
今回の改正で、守備側チームが「ハーフウェーラインに向けてボールをプレーし、そのボールがゴールラインと平行なペナルティーエリアのラインよりハーフウェーライン方向に出た」後は、その「プレーにかかわっている段階」は終了し、オフサイドの判定においてその守備側競技者は「プレーにかかわっていない」状態になることを明確にした。
この状態になったことは、副審が主審と適切にコミュニケーションを取って判断することが原則だが、主審に伝えられない状況においては副審が自ら「その競技者がプレーにかかわっていない」と判断し、新たなオフサイドラインに位置する。
副審の視点で言えば、自分が第一に判断するという心持でいることが求められます。
では、以下のような場合はどうすればいいのでしょうか?
これは下のQ6の場合です。
Q6: Q5と同じ状況で、守備側チームが、ハーフウェーライン方向ではなくタッチライン方向に向けてボールをプレーしてペナルティーエリアを出た場合はどのように考えるのか?
引き続きゴールライン上で「プレーにかかわっている」と考える。
よって、図でいえばGKの位置が最終ラインになります。
Q7: Q5と同じ状況で、攻撃側競技者が相手競技者のペナルティーエリア内からハーフウェーラインに向けて(後方に)ボールをプレーした場合は、どのように考えるのか?
引き続きゴールライン上で「プレーにかかわっている」と考える。
Q7の回答の通りですね。
グレーゾーン
でも、こういう場合はどうするんでしょうね?これは質問と回答や動画にも説明がありませんでした。
副審の位置は、ここでいいのでしょうか?
※図ではこの位置にしましたが、私はおそらく副審がとるべきポジションはGKの位置ではないかと思います。(特に2番目のケースでは)
これは全くの私の推測ですが
おそらく、このような「グレーゾーン」のケースでは、外に出た守備側競技者が「プレーに関わっている」とみなされなくなるかどうかの判断は、これまでオフサイドの旗 を上げて攻撃方向が切り替わった場合の運用と同じように考えるのではないかということです。
※オフサイドの旗を上げても主審が気づかなかった場合、副審は主審が気づくまで上げ続けるのが原則です。しかし、攻撃方向が変わり、それまで守備側だったチームがポゼッションしたような場合には、旗を降ろして良い、という打ち合わせが為されていました。それと同じように、「攻撃方向が変わりポゼッションが確定したか」を基準に考えるということです。
「守備側チームがボールをハーフウェーラインに向かってプレーし」
この文言の「プレーし」ということに当たるかどうかという解釈問題であると思われます。この改正の趣旨は、負傷した守備側競技者がフィールドを離れることにより、プレーが停止するまで「全員がオンサイドになる」ことは不公平であり、それを調整するためです。
つまり、長時間オフサイドラインが非常に低い位置になってしまい、攻撃に転じようにもラインを押し上げることができない状態が続くことを避けようという理念が垣間見えます。
これによって、従来はカウンター攻撃ができたのに、ラインが低い状態を考慮してボールを外に蹴りだし、ライン外に出た競技者の負傷等の対応を優先せざるを得なくなるという状況を避けることができます。
今回の改正の背後にこのような理念があるとすれば、上記解釈もあり得ると思われます。
ただ、これでは判断が難しくなってしまうため、機械的にはハーフウェーライン方向にPA外に出たら解除されるという運用がされる可能性もあり、レフェリーにとってはそれが判定がぶれず望ましいとも考えます。
何度もいいますが、私はこの件について偉い人に確認したことはありませんので、単なる推測です。ただ、それなりの合理性がある推測であり、打ち合わせに活かせると思っています。
何しろ、このようなケースはおそらくまだ事例の蓄積が不十分であるためにあまり議論されていないと思われるので、もしかしたらオフィシャルな回答は存在しないのかもしれません。
どなたか教えてください
打ち合わせとしてどうするか
では、実際の打ち合わせはどうするかということですが、知ってる人と知らない人向けで全く異なるでしょう。
このルール変更自体を知らない人は大勢います。なので、そういう人には、ここで書いたルールを教えます。もはや打ち合わせではないですね。
知ってる副審向けには
「副審の判断に任せる」
こう伝えます。
え?何だか無責任な気がする?
いいえ、その方が判断に迷いが無くなるので、実際上上手くいきますって、きっと!
JFAの「質問と回答」にも副審が判断するって書いてあるし。
もちろん、知らない副審、知ってる副審、いずれの場合であっても、主審が「解除」される状況になったのかを素早く把握して副審に伝えようとする姿勢でいるべきことは変わりありません。
とにかくこのルール、今のところ「闇」なので具体的な事象を体験した方がいらっしゃったら教えて頂きたいです。。。
新たな再開方法に関しての注意点
重要な変更
これまでのオフサイドの再開位置についての記述は、削除されました。
細かいことは抜きにして、以下のように一応整理できます
- 副審としてはやることは変わらない
- 副審の上げた旗の意味が変わるだけ
パスが出た瞬間にオフサイドポジションに居た選手が、ボールに触るまでに多くの距離を移動することがあります。
この場合、これまではパスが出た瞬間に居た場所から再開でしたが、今回から、ボールに触った(あるいは守備側競技者を妨害した等)地点からの再開になります。
したがって、攻撃側競技者のハーフの側が再開地点になる場合もあります。
該当箇所は、動画の6分13秒からです。
さて、選手の側が、再開位置を勘違いすることも今回の改正でとても多くなっています。選手としては、これまでは副審の旗の位置で再開すればよかったのですが、そうではなくなりました。
その分結構アバウトな再開位置で良いという風潮になりそうな気が……
必ず主審が再開位置を把握していなければなりません。
次の場合に注意することが多いのではないかと思います。
副審はPA外で旗を上げているが、守備側競技者のPA内で再開するとき
大前提として、攻撃側競技者が守備側競技に影響を与えていないと仮定します。
もう一度、大前提として、攻撃側競技者が守備側競技に影響を与えていないと仮定します。
つまり、「触れたボールをプレーする」としてオフサイドの犯則になる場合です。
プレーの再開位置は、この図でいうボールの位置です。
かつてのルールでは小さい赤丸の地点でしたので注意してください。
この時、副審はボールの位置まで動く必要はありません。
副審はPA外で旗を上げているため、再会しようとする選手はそれに合わせてボールを持ってく可能性があります。PA内とPA外では、プレーの再開が有効に行われたかどうかが異なるため、きちんとした場所から再開させなければならない場合があると思います。
このときに選手から
「( ゚Д゚)ハァ? 副審の旗はこの位置じゃねぇかよゴラァ!!」
って質問(笑)されるかもしれませんので、しっかりと説明できるようにしましょう。
少年だろうがシニアだろうが、選手が再開位置を理解していないのであれば、主審が示してあげましょう。
まとめ:最も面倒な改正なのでしっかりと復習しましょう
これらを副審に教えられる程度に覚えれば、実際の試合中で該当する事象が発生しても、そつなく対応できると思います。
以上